少子化が叫ばれている現代。景気が悪いからという理由が大半で子どもを作らない夫婦が多いですが、中には欲しくても出来ない夫婦だっています。そんな夫婦の夫側が原因となっている場合、大半の人は乏精子症の可能性があるのです。 乏精子症とは? その症状は?造精機能障害(精子を作るための機能に障害)があり、射精された精液中の精子濃度が低い状態である症状のことを乏精子症と言います。乏精子症と診断される精液中の精子濃度は、1mLあたり1500万個以下です。 1500万個以下なら軽度、1000万以下の場合は中等度、500万以下の場合は重度と区分され、500万個以下になると、高度乏精子症と呼ばれます。自然に妊娠しやすい精子濃度は1mLあたり4000万個以上、総運動率は50%以上です。 よく混同されやすい症状の1つ、精液中に全く精子がない状態である無精子症は総運動率の低さ(20-30%以下)も診断対象になります。しかし、乏精子症は運動率は低いとは限りません。 乏精子症の原因現代の発達した医学でも乏精子症の原因をはっきりと特定するのは非常に難しいです。様々な要素があるため、はっきりとこれが原因だと決めつけられないのです。しかし、可能性として該当するものはあります。 ・精索静脈瘤(睾丸上部に流れる静脈の異常肥大) ・おたふく風邪による精巣炎 ・停留精巣(子どもの時に精巣が陰嚢内に降りず、造精機能に障害が出ること) ・ホルモン分泌異常(LH、FSHといった脳下垂体前葉から分泌される卵巣を刺激するように働くホルモンの異常) ・染色体異常 ・喫煙 といったものが挙げられます。 特に、乏精子症を含めた造精機能障害と診断され、男性不妊治療を受けている人は喫煙者、そして精索静脈瘤を患っている場合が多いようです。 乏精子症の検査方法乏精子症に限らず、不妊症を疑った際に検査で受けるものとして最も重要となるのが精液検査です。精液検査で精液量・精子濃度・運動率などを確認でき、不妊の原因となる病気を知ることができます。 泌尿器科で診察を受け、精液検査の他にも問診、視触診、超音波検査、ホルモン検査を受け、必要に応じて、染色体検査、AZF検査を行う場合もあります。 精液検査は自宅または病院で精液を採取し、顕微鏡で精子の状態を観察します。精液の状態はそのときの環境や体調により結果の変動がしやすいので1回の診断では判断できません。そのため間隔を開けて通常2〜3回行い、その結果を総合して診断されます。 視触診では、睾丸の大きさ、精子を運ぶ管、精巣の血管に異常がないかを見ます。超音波検査では精子を運ぶ管に狭窄や詰まりがないか、睾丸に悪性腫瘍がないかを調べます。 他にも採血によるホルモン値検査、性交渉後24時間以内の検査となるフーナーテスト(排卵日頃に性交渉を行い、子宮頸管粘液を採取し、その液を顕微鏡で拡大し、動いている精子の数で精子の状態を調べるもので、これも何回か検査を繰り返す。)を行う場合もあります。 これらの検査で総合して、精子濃度2000万/ml以下の場合に、乏精子症と診断されます。 乏精子症の治療方法もしあなたの乏精子症の原因が不明の状態であれば、残念ながら決定的な特効薬は現代の医学では存在しません。ただし、軽度である場合は薬物療法で改善する場合があります。 原因が脳下垂体のホルモン分泌であれば女性のホルモン療法に用いられる排卵誘発剤のクロミフェン製剤やhmg製剤が使われます。女性ホルモン療法に使用するものが男性に効くのかと思うかもしれません。これらには造精機能を高める働きがあるので、精子数の改善に効果があるのです。 ホルモン分泌に異常がないときは、漢方薬やビタミンB12剤、B6剤、血液循環改善薬などを組み合わせて薬物療法に取り組んでいきます。精巣の働きを活発にしたり、精子の生成を促進したりする働きがあります。しかし、効果が必ずしもあるとは限らず、効果が無かったというパターンは結構多いです。 そういった時には、現在の精子を有効に使う不妊治療に移ります。軽度な場合は人工授精からスタートしますが、高度乏精子症ではそれも難しいので顕微授精を行うのです。軽度でも人工授精で結果が現れなければ顕微授精をします。 乏精子症の予防方法乏精子症は原因が分からないということが多く、予防法も確立されていません。とにかく精巣や精子に影響を与えるとされる生活習慣を改めることは対策の1つだと考えられています。例えば、 ・睾丸を締め付けるブリーフよりもトランクスを履く ・股間を暖めてしまう膝上でのPCをするのを禁止する ・加工食品ばかりの不摂生な食事を控える まずは、自分の日常生活を振り返って規則正しい生活習慣をとるように努めれば乏精子症の良い対策になる可能性は十分にあります。 |